歯の移植「自家歯牙移植」

歯の移植「自家歯牙移植」

こんにちは院長の河合です。今年も残すところあとひと月足らずとなりましたが、昨年より少しは安心して年末を過ごせそうですね!最近、親知らずの移植に関するご相談が数件ありましたので、今回は歯の移植に関してお話してみようと思います。

虫歯や破折などで歯を抜かなくてはならない場合、この部位に健全な親知らずなどを移植する治療を「自家歯牙移植」と言います。ブリッジのように隣の歯を削る必要がなくインプラントと違って自分自身の歯を活かすことができ、自然な噛み心地、拒絶反応や感染のリスクが低い等の長所があること。また条件が揃えば保険適応の治療となります。

 

先月、自家歯牙移植を行った症例を紹介しながら治療の流れをご説明します。

① 右下銀歯の所が腫れて痛くて噛めないとの主訴で来院された方です。(30代女性)

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レントゲンを撮影すると、歯根が破折しており保存が不可能な上に周囲の歯を支える骨が大きく欠損していました。

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② 右上に噛み合わせに関与していない親知らずが一本残存しておりましたので、この歯を移植できることを説明し、翌週 抜歯と同時に移植を行うことになりました。

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③ 移植の手順です。(1)まず歯根破折している右下奥歯を抜歯します。(2)抜歯窩に残存する歯根膜を最大限に温存するように、根尖部の最小限の骨削除で受容床を形成します(3)歯根膜を温存するように親知らずを愛護的に抜歯します。(4)ドナー歯の抜歯後、歯石のチェックを行い、追加の骨削除なく、抜歯から1分以内に速やかに受容床に収め縫合しました。

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移植直後の状態です。破折歯の抜歯、受容床形成、ドナーの抜歯、移植して縫合を終えるまで一連の処置に20~30分程度かかります。

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⑤ 移植直後のレントゲン写真です。頬舌側の歯槽骨が大きく欠損しておりましたので受容床をやや深めに形成し深めに移植しています。隣在歯とワイヤーで固定します。

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⑥ 歯根が完成していない歯を移植した場合は治療はこれで終わりになりますが、成人で親知らずの歯根が完成している場合には2週間後に根の治療を行います。根の治療を行わないと歯髄が壊死して歯根吸収が進んでしまうためです。

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根の治療が終わった状態です。まだ移植から約3週間後ですが、周囲に骨が再生してきているのが確認できます。

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約一カ月後に固定を除去して自然に上に出てくるのを経過観察しますが、必要に応じて矯正的に挺出させて上の奥歯としっかり咬ませるようにします。

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今回は抜歯が必要な歯に親知らずを移植するケースでしたので、一連の治療は保険適応にて行いました。

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このように不要な親知らず等があり移植が可能な状態であれば、自家歯牙移植によってブリッジを回避できたり、インプラントにせずとも隣在歯を削らずに済むケースもあります。

しかし移植の条件が良い若年者で欠損になることがあまり多くないこと、歯牙移植の手技が難しいこと、術後の予後が読みにくいこと、どこの歯科医院さんでも行っている治療ではない。などから「自家歯牙移植」を知らない方も少なくないようです。

保存不可能だと診断された方、一度自家歯牙移植が可能かご相談ください。大切なご自身の歯を一本でも多く残せますように!

 

 

先日、学生実習を担当させて頂いている北海道歯科衛生士専門学校の先生方が取材にいらっしゃいました。

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来年の学校紹介に当院で勤務している卒業生が載るようで楽しみです!

 

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43歳の誕生日を皆に祝っていただきました。早いもので歯科医師になって17年経ちましたが、日々学ぶことがあり歯科の仕事は本当に楽しいです。来年は5-D Japanでのアドバンスコースが再開されるので今からとても楽しみです!

今年も残りわずかとなりましたが皆様お体に気を付けて良い年末をお過ごしください。


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